ヴァレ君対面篇(75巻)
| さて、ヴァレ君対面篇ということで、75巻のヴァレ君の名(迷)台詞を記します。 75巻分は、ヴァレ君とイェライシャにアグリッパまでも加わり、長台詞度がかなり増した感がありますが、これは致し方がないのかもしれません。せめてもの救いは、丸ごと1巻ではなくその半分だったことでしょうか。 多分に漏れがあると思いますので、「こんな名台詞がある」だの「ここが違う」だのというご意見がありましたら、ボードなりメールでなり申し出て下さい。(^^) |
(それほど、はるかな昔……) (その――アグリッパの前に……いま、たかがこんな微力な一介の、パロの上級魔道師ギルドにすぎぬこの俺が……) (三千年ものあいだ、ずっと魔道をきわめつづけてきて……) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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(たとえこの身は一介の、とるにたらぬ上級魔道師にすぎぬといえども――俺にも、あふれる思いが――それだけは誰にもひけをとらぬはずの熱い想いがある……俺には、三千年を生きたというほどの伝説の大魔道師の前にさらけだせるものはただそれだけしかないとしても……) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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(これは……) (アグリッパは……アグリッパとは、俺がひそかに予想していたような魔道師ではないらしい……いや、それは、よい意味で、というか……もっとずっとおそるべき意味でだが……) (だが、この……わずかことばをかわしただけの感触でさえ、俺にでもわかる。……このひとは、もはやある意味、まったく《人間》ではない……もう、そんなものは、地上の人間の喜怒哀楽などまったく超えてしまっている、神のほうにはるかに近い存在だ……) : (ということは……グラチウスのいっていた予想はまったくはずれていたことになる。……ここでこうしてこの念波にちょっと触れてみてさえ……この念波の持主は、中原の王国の帰趨になど何の興味ももたぬ……そんな人間的な感情などもうとっくの昔に超越してしまった存在だということがわかる……ということは……) : (そうです。……それはもう、ふれたとたんに感じました。……ここでこうして、ずっとたてこもって観相と大宇宙の運命を考察しているだけのこのような超人が、どうして、ああしてアルセイスにあらわれて小細工めいた手妻など使って、人々をたぶらかしたり……魂返しの術を使ってモンゴールの運命をあやつったり……なんというのだろう、そんなこざかしい人間くさいわざなど、ここには何ひとつ感じられない……そんなことに関心をもつ精神などここにはない……) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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(ナリスさま――! だから申上げたでしょう。イシュトヴァーンは危険だ、危険すぎる、と……彼もまた、ヤンダルの手先、というよりも知らずして運命をヤンダルにあやつられている傀儡なのですよ! あなたは……あなたは、何から何まで、ヤンダルにあやつられ、ヤンダルの思いのままに動かされておられるのですよ!) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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大導師アグリッパ曰く―― (《調整者》について知っているというだけでも、たぶんお前は、われが感じ取れるそのお前のあまりにも小さなエネルギー総量自体よりも、なんらかの力の所以を持っている存在なのだろう) (われに感じ取れるお前の魔道師としての力量とそしてエネルギー総量は、とうていこのような場所へまで到達することは単身ではかなわぬだろうという程度のものでしかないはずだ。だが、そこのより大きな力をもつ魔道師の力をかりてとはいえ、ここまでやってきたお前が、そうして《調整者》のことを口にするというのは、われには残っていたわずかな人間的な興味をかきたてる。――云うがいい、魔道師、《調整者》について、お前は何を知っている。そして、そのことはお前に大宇宙へのいったいどのような観相をもたらしたのだ? そしてそれにもかかわらずなぜお前はそのようなかよわい、ただの人間のレベルにとどまった知能しか持っておらぬのだ?) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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(従者……といっていいものかどうか) (私の思いえがく彼のすがたから、私にとって彼がどのような存在であるのかを感得していただければ、私にとっては幸いです、大導師。――私にとっては……彼はことばにすることのできぬ存在なのです。いつしかに、そうなりました……最初は、そうなるまいとありったけあらがい、それから次には彼とたたかおうとし――ありとあらゆる手段で彼の傀儡となることから逃れようとたたかって……そして、しかしたぶん運命によって……いまでは、私は……死ぬときにはともに、と彼と誓った――たぶん彼の半身のようなものなのかもしれません。……だが彼を理解することは私にはできない。彼のほうがずっとよく――あなたと会話し、あなたの注意をひきつけることができるだろうと思うと残念です。彼がここにこられたら、どんなにか彼は……あなたも、興味深い会話をかわすことができるでしょう。――あの古代機械についてだけでも……) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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(私にははじめてきくことばでした。それに私には信じられませんでした……もし、あるじとあれほど何回もことばをかわし、あるじのことばをくりかえし疑いつつもきかされていたのでなかったら――まったく意味のないことばにきこえたことでしょう。私は疑っていた――私はそのことについてはどれほど彼にわびても足りない。私は彼のことばを信用していなかった。いのちをかけて彼にすべてを捧げるとさえ誓っていながら、私は彼を信じてさえいなかった。彼のことばはすべて詩人の空想にすぎぬと思っていました。病んだ不幸な魂が砂漠にあこがれてさまよい出て見たまぼろしだと。……だが、たまにはこのようなこともあるものなのでしょうか……彼のことばはすべて真実だったのでしょうか? はるか昔、カナンには星船が、宇宙戦争のはてに墜落し、それによって帝都カナンを一瞬にして滅亡させたのでしょうか……そしてそののち、カナンはノスフェラスの砂漠と化し……そしてそこに眠っていた竜人たちは長いときを経て目ざめ、おのれの故郷にかえる方法を求めてあらたな活動を開始したのでしょうか? 本当にこの惑星は人間たちだけのものではなく――神々と精霊や死霊たちのものでさえなく、異世界から、異次元からやってきたまったく見知らぬ種族をも内包していたのでしょうか? この世界について我々ただの人間たちが考えていたことはすべて、おろかな、知らぬがゆえの貧しい妄想にしかすぎなかったのでしょうか?) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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大導師アグリッパ曰く―― (――お前は、面白いやつだな) (まことに何ひとつ知らぬ、おろかな上級魔道師とやらにすぎぬのだとしたら、よくぞ……そのあるじアルド・ナリスのおかげかもしれぬが、よくぞそこまで、たかが一介の虫けらの身でそこまでより巨大な真実に迫り得たものだ。――それがわれの興味をひいた。むろん観相の刻をさまたげられることは好かぬ。だが、お前のことば――否、ことばよりもお前の発散する何かがわれの興味をひいた。何が、とはまだことばにできぬが、それについていま少しことばを交わしてみることにしよう。どれ、結界を開いてやるほどに、われの結界に客となるがよい。そこの老いた黒魔道師とともにな) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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イェライシャ老師曰く―― 「おぬし、だいぶん元気が出てきたの」 : 「よく喋るようになったからだよ。おぬしは本来、そういう陽気なたちじゃろ。あのパロの麗人にかかわってかなり本来のさがを矯められていたのかもしれぬが、それでこそ、おぬしらしいよ。おぬしのオーラがごく普通の色あいになってきたでな」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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「そう……ですか。そうですねえ……きっと、私はやっぱり魔道師なんですね。魔道が好きなんですよ」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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「だが、いまとなっては……結局のところ、われわれは狭い池の中の魚しか知らぬランダドだったのだろうかと思わざるを得ませんね。――われわれはたぶん、本当におそるべき魔道師などというものと直面する機会がなかったので、そういうものの存在を知らなかったのかもしれないという気がします。――もしも私ひとりだったら、いや、カロン大導師おひとりでさえ、いったいこのような巨大な魔力に対してどのように立ち向かえたであろうかと思うと……何だか根本的に間違っていたのだろうかと……われわれの進化してきた方向は。といって、われわれの今の力をあわせればどうなったかということは、キタイの王がみごとに証明してくれたところですし……」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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「私はほとんど生まれたてのヒヨコも同然ですね。わかっていたことではありますが」 「なに、しょげることはない。相手はこの地上最大の魔道師なんだよ」 「それでも、老師なら、ちょっとゆるめてもらっただけで、魔道がきくようになるんですから」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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大導師アグリッパ曰く―― 「面白いことだ。驚くべきことだ――久々に、わがこのとうの昔にひと、という枠組みを離れてしまった精神に、ひとの魂がふれてくる――そして、われもまたはるか昔、このようなひとの子であったのだとかすかにささやく。――このような刺激がわが魂に触れてくるのさえあまりにも久々のことだ。現世から観相しうるものはすべてしつくしたと思うていたわれの思い上がり――それがこのようにして矯められるのはある意味、驚くべき喜びにほかならぬ。――まこと、よう参ったな、若き魔道師よ。そしてよう、われのこの魂のおくつきにまで達してわれを呼び覚ましてくれたな。礼をいおう。われはひさびさにわれもまた≪ひと≫であった感覚をよみがえらせた。――こなたの持込んだその血潮の熱さや思いのゆらめき、そして情念の激しさが、われにはこの上もなく新鮮に感じられる。……かつてはそのようなやくたいもないものに倦みはてて、すべての王国をはなれ、はるかノスフェラスへ――そこにさえもたずねあててくる者たちのとぎれぬことにいやけがさしてさらにこの次元へとひきこもっていったわれであったものだがな」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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「恥じ入っているのは……おのれの概念があまりにも皮相的で、あまりにも現世的で……あまりにも表面的だったことにうちひしがれているのです」 「私の持ち込んでこようとした懸念や……お願いはあまりにも現世の……おろかな、人間たちの……ここにこうしていれば、あなたの内宇宙にいるのですから、その広大さも、偉大さも――奥深さも底知れなさも、いかな馬鹿な私といえど感じます。そのあなたに対して、私のおろかなあありにも浅薄な尺度でしか考えず、見ないでここまできてしまったおのれのあさはかさに、私は……恥じ入って血を吹きそうな気持ちなのです。おそれているのは……おそれているのは、あなたではなく――こうしているあいだに、地上で……おこるかもしれぬ異変のことを…… |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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イェライシャ老師曰く―― 「わかります」 「だがこの若者にはわかりますまい。彼は、ひとの子の生のまっただ中にあって、いまやまさにそのなかで苦悶しているのですから」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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大導師アグリッパ曰く―― 「それは、こなたのいうのももっともだ。――この若者は所詮ひとの子として生きてゆき、そして死んでゆくだろう。それがたまたま魔道師であるからといって、すべての魔道師が魔道師としての心を持つとは限らぬ。おそらくはこの若者は、魔道師を志しつつ魔道師たりえぬからこそ、このようにわれの心をも――もはやひとの子たることを忘れたわれの心をも動かし、ふれることを得たのだろうからな。そのように考えれば、ひとの子であるということも、さのみ捨てたものではない」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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大導師アグリッパ曰く―― 「ノスフェラスは、生きている」 「――われのいうたのは文字どおりの意味だ。ノスフェラスは死の砂漠ではない。そのなかで、すべては生きて活動している――そう、すべてが、だ。ただ……眠っている。だがその眠りはいつかさめるだろう――それは現に、過去のあいだで何回か醒めた。大きな地殻変動がおこり、そして――星船が飛び立った」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第一話「生ける伝説」より |
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「なんと」 「そうなのですか。グラチウスはすでに豹頭王グインに近づき、わがものにしようと働きかけた――と?」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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イェライシャ老師曰く―― 「確かにアルド・ナリス、彼もまたきわめて珍しい存在ではある。彼は魔道によってでも事実への知識によってでもなく、ただその魂の求めるロマンによってのみ、この世界の本質に一瞬手をふれることを得たのかもしれぬな」 「自由に空をはばたくことを禁じられた鳥だからこそ、そのようなヴィジョンを得たのかもしれないが……」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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イェライシャ老師曰く―― 「まあ、そういうものでもないさ」 「わしとても、その昔は若造だったのだし、それをいったら、失礼ながらこの大導師ほどかたでさえもそうだったのだよ。人間、誰もが昔は若いんだよ」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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大導師アグリッパ曰く―― 「――グラチウスのことばに耳をかたむけ、迂闊にもグラチウスの接近を許しておれば、いずれはアルド・ナリスをグラチウスにさらわれるということにもなろうし、このたびの反乱でスカール太子がアルド・ナリスとともにたたかうこととなれば、グラチウスは一気に求めるカギ二つまでも手中にする好機を得たと思うだろう。――これについてだけは充分に注意しておくことだ。だが、これは……折角このような機会を得て、いく久しくぶりにひとの子と語るを得たのだから、われからそのうら若き魔道師におくる言葉としていうておこう。――二つならば、それは、まだどうかわからぬ。だが――三つそろえばおそらくは……その現象自体の意志というものが発動するのではないか、という気が――われにはする。いや……それもまだわからぬ。グインとスカール太子とは同じ秘密にすでに属しているが、それにアルド・ナリスがどうかかわってくるかはわれにはわからぬ。――いずれにせよ、われの観相によれば、彼の定命はすでにまことには尽きているはずだった。というか――彼はすでにいくたびもドールの鬼籍簿に入れられていたはずの人間ではなかったかという気がする。その彼がしかしこれまで生き延びて、そして――今度こそわれの考えでは逃れようのないであろう最期をも、まぬかれるものかどうか――そうなれば、世界の運命もかわるやも知れぬな。どうやらわれが思っていたよりも、あの隻足の王子はしぶといようだ。もしも彼がこの、キイを握るものたち二人と会見をはたしたとすれば――かれらのすべての知識とカギとがひとつになったとしたら――世界は変わるかもしれぬ。そのとき、新しい世界が訪れる可能性もひらけるかもしれぬし――少なくとも、キタイの竜王で太刀打ちできる程度のものではない、おそるべき《力》の場が、この三人をめぐって生まれるかもしれぬ、という気もわれはせぬでもない。これは主としておそらく、豹頭王グインがもたらす力なのだろう。これまでは――グインの額にケイロニアの王冠がまことにいだかれるまでは、われにはまったく感じられなかった潮流であったからな。われは、もうとくに中原の命運は尽きているのかと――竜王の手にかかるまでもなく、<闇の司祭>の手によって蹂躙されるさだめかと思うていたのだよ。むしろその意味では、キタイの竜王は思いがけぬあらたな展開を中原にもたらし――ある意味では中原を救うことにさえなったのかもしれぬぞ。そのように思うてみてはどうだな。若きヴァレリウスよ」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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イェライシャ老師曰く―― 「大導師――」 「思いのほか長々と導師の観相をさまたげてしまった気がします。だが、教えていただいたことどもは――おそらくはヴァレリウスよりも、このイェライシャにとってこそきわめて重大なことばかりでしたし、それに……それをこうして話して下さった大導師のお心のうちは私にはおそらくわかった気がいたします。……いずれにもせよ、大導師はすでに地上のささやかなひとの子の右往左往は超越されたおかただ。――ふたたびお目にかかれるときがくるや否やと思えば、お名残はつきませぬがとおあれいまはこれにておいとま」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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(俺は……俺にはあまりにも手にあまる任務を引き受けてしまったようだ……だが、グラチウス、そうだ、グラチウス……) アグリッパの真意をただせ、とヴァレリウスに命じたのは、グラチウスだったし、アグリッパを味方につけてこい、と命じたのもまたグラチウスだったと思う。そのグラチウスに注意せよ、と当のアグリッパがいうとは、グラチウスは予想もしていなかったのか、それともしていたのか。 (いずれにせよ……この世界の三大魔道師の二、〈闇の司祭〉と《大導師》との考えることや……その観相の結果んど、俺にはあまりにも遠いものにすぎて……どう理解しようもないのかも……) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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「あまりにも、私の力は……アグリッパはむろんのこと、老師とも差がありすぎて……なんだか、こんなところまできて本当にご迷惑をかけ散らしている気持ちです。申し訳ない――本当に、子供がわけもわからずに騒いでいるようにごらんになられたかと思います。お恥ずかしい」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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イェライシャ老師曰く―― 「おぬしがだんだん気にいってきたよ」 「若いに似合わず謙虚な上に、魔道師に似合わず素直だ。ああみえてアグリッパはけっこうおぬしのことが気に入ったのだよ。そうでなくば、あんなにしゃべってはくれまいよ。おぬしはなかなかに、人に好かれる、というか、じじい受けがするようだな。おぬし、カロン大導師などというどこの馬の骨とも知れぬいかさま魔道師の後塵を拝しておらんで、ひとつわしに弟子入りせんかね。おぬしはなかなかに素質もあるし、わしがきたえあげてやれば、わしの後継者としてずいぶんといいところまでゆけるだけのエネルギーは持っておると思うよ。確かにいまのおぬしのその魔道のレベルはわしから見れば素人同然だし、それはもうあの魔道師ギルドなんぞにかかわっておるかぎりやむを得んことじゃろうて。勿体ないな、折角よいものを持っておるに。どうだ、この一連の戦争が終わったら、わしに弟子入りしてみては。おぬしなら、わしは喜んで引き受けるよ」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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「そ、それは願ってもない素晴しいお話ですし……夢のようなおことばです」 「おそろしく光栄で……どうしていいかわからないくらいです。それに……私も魔道師を志したくらいですから……魔道をきわめたいという気持はものすごく……でもいまは私は私のあるじが……おお、でも、もしもそちらが本当に一段落して、時間がとれるようになれば……本当に弟子入りさせて下さるのですか。大導師アグリッパのようになるなどという高望みはしませんが、せめてグラチウスとなり、いや、私自身がヤンダル・ゾッグと対等に戦えるだけの魔力があったらとどれだけ――ヤンダル・ゾッグにあっさりととらわれてしまった腑甲斐なさにくやし泣きしながら、聖王宮のなかでどれほど痛恨と痛憤を抱いていたかわかりません。……確かに老師のおっしゃるとおりです。月給とりの御用魔道師なんか、ものの役に立ちません」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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イェライシャ老師曰く―― 「それに、わしはおぬしのアグリッパへの対応をみていておぬしが気にいったのだよ。えらく素直で……おぬしとアグリッパとのあれほどの極端な力の差を前にして、いたずらにいきがることも、突っ張ることも、というて不必要に怯えておののいてしまうこともなく、実に素直でありのままだった。だからこそアグリッパもあんなにいろいろとおそるべき秘密を話してくれたのだよ。おかげでわしが得たところのものは、おぬしにはとうてい理解できぬであろうほどでかい。この恩義はかえしてやらずばなるまいて」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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イェライシャ老師曰く―― 「あれは何があろうと、その力を貸して地上のことに介入したりはもうせぬよ。だが、それではおぬしはヤンダル・ゾッグとグラチウスとのたたかいにまきこまれて、みすみす自滅してゆくしかなかろう。わしが力を貸してやろうじゃないか」 |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第二話「ノスフェラスの秘密」より |
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リギア曰く―― (なんというのかしら……ナリスさまのほうから、ヴァレリウスに対して、感情がたかぶったり苛立ったり、ぶつかってきて、それをヴァレリウスが受け止めようと必死になっている、というような……なんだかいつも格闘でもしているような落ち着かない緊張が感じられると前から思っていたのだけれど――一番ふたりがくつろいで、とても仲良さそうにしているときでさえ。――でも、この二人は……全然違うわ。なんだか……雰囲気が妙に落ち着いていて……そう、本当はことばさえも必要ではないんだけれど、ほかの人間――つまり私ね――私がいるから、ことばにしなくてはならなくて面倒だ、というみたいな。――不思議なことね。もしかしたら、ナリスさまは、ヨナが一番お気があってらっしゃるのかもしれない) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第三話「風動く」より |
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市井の市民のささやきより―― (まあ、あの人は魔道師だしな……) (そうか、わかった!) (な、なんだ) (ヴァレリウス宰相は、ケイロニアに密使にいったんだ! そうだ、そうにちがいない) (おお……それは、あるかもな……) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第三話「風動く」より |
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市井の市民のささやきより―― 魔道師宰相ヴァレリウスこそは、この謀反のむしろ張本人のひとりとして、ナリスをそそのかした人物ともみられ、国王側からはすでに正式に、「宰相、伯爵の称号すべての剥奪と、きびしい罪の糾明」が通告されている。それはアルカンドロス広場に張り出された国王の広報で、すべての市民たちに知れ渡っていることだ。市民たちにもまた、身動きも不自由なからだであるアルド・ナリスをそそのかして、ついにこのたびの謀反にいたらしめたのは、結局は、ナリスの推挙によって魔道師初の宰相となったヴァレリウス当人にほかならぬ、とする見方も根強い。 (あの、アムブラを弾圧したのだってあいつだったはずだし) (大体あの、やせこけた外見が油断がならぬと思っていたんだ) (ナリスさまが、あいつにだまされてたぶらかされたんでなければいいが……) |
| 本伝第七十五巻「大導師アグリッパ」第三話「風動く」より |
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「ヨナどの」 懐かしい―― 限りなく懐かしい、そして頼もしい心話が――かれらの脳にひびきわたった! 「ヴァレリウスさま!」 ヨナは叫んだ。そしてこんどこそ、すべての力を失ったように、馬車の床にくずれおちた。 |
| 本伝第七十七巻「疑惑の月蝕」第四話「出奔」より |
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