ヴァレ君運命篇(59巻)

 

お次はヴァレ君運命篇ということで、59巻のヴァレ君の名(迷)台詞を記します。
実は58巻から既刊分までをまとめるつもりだったのですが、名台詞――というか長台詞が多く、こんなにも大量になってしまい、その結果、59巻のみとなってしまいました。58巻に続いて、相変わらず絞り切れないでおります。(^^;;;
多分に漏れがあると思いますので、「こんな名台詞がある」だの「ここが違う」だのというご意見がありましたら、ボードなりメールでなり申し出て下さい。(^^)

 


 


「お前はいつでも本当に理性の徒だね、ヴァレリウス――」
「誰かがそうでなくては、みんな――人も世界もどのようになっていってしまうのか、想像がつきません」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

確かに、ナリスやイシュトのような人間ばかりだとどうなることやら……。(^^;;;

 


 イシュトに「おっさん」と呼ばれて。――

「私はあなたよりそんなに年上じゃありません」
「あなたにおっさんと呼ばれる筋はありません。もう一回そう呼んだらもう舟は出してさしあげませんよ」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

まあまあ。大人げないよ、ヴァレ君(笑)

 


「必ず戻ってきてくれるだろうね、ヴァレリウス」
「私があなたをおいてゆくとでも?」
「そんなことは思わないけれど――いってみただけだよ。ただ」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

何となくナリスらしくない台詞なので。(^^;;;
確かにヴァレ君にこのまま置いてきぼりにされたらナリスはどうなるんだろう……ヴァレ君の結界の中だから、アルノーやディランだと破るのは無理だろうし……。

 


「ですから、ご退屈でしょうが、いい子に待っていらして下さい。お願いですから、せめてそのあいだだけは悪だくみも陰謀も――これ以上話をややこしくするようなことは何もなさらないで待っていて下さいよ。お願いですから。――本当は、あなたから目をはなしていると何をはじめられるかと思うと心配で心配で――
タルザン
一分とお一人にしておくのは嫌なんですが」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

ナリスの身が心配なのか、ナリスが何か悪巧みや陰謀を巡らせるのかが心配なのか……両方でしょうね、これは。
#しかし「いい子」ってねぇ……。(^^;;;

 


「怒っているなんてもんじゃありません。そんななまやさしいものですむと思っているんですか」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

思わずうなづいてしまった私です。(^^;

 


「何もかも気に入りませんとも。あなたのやることなすことすべてが」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

……私がイシュトに対する感情ってこういうことなんだろうな、と思いました。イシュト個人は魅力的でもあり、決して嫌いではないのですが、どうしても許せないことがありますしね。

 


「あなたはいつだってそういうつもりはなくて、だけれども一番あのかたにとっちゃ不幸の使者みたいな存在になるんです」
「一番腹立たしいのは、それをあのかたが受け入れたり、甚だしきは喜んでさえ――それが待っていた知らせだ、とさえ思ったりされることです。いっておきますが、決して嫉妬してそういっているわけじゃありませんよ。そんなもんじゃない。私も――それに私ももう、仕方がない――なるようになったのだと思うほかないことはわかってはいるんです。――たぶん。いつかは――あなたでなくても、今回のようなこういうかたちでなくとも、かならずなんらかの――運命がやってきて、そして――そうなっていただろう、とはね。――だが、それがこんなに早いなんて……とついつい、うらみごとのひとつもいいたくなるんですよ。――私には見えるんです。中原を火の海、血の海にまきこんでゆくたけだけしい軍勢――あなたがその髪をなびかせ、不吉な旗じるしをおしたててひきいてゆく軍勢のひづめにかかってゆく中原と――私の愛する国の姿。燃え上がる町々、殺されて倒れて行く罪もない庶民たち。そして、流れる血――名もない兵士の血も、そして――そして貴い青い血もまじりあってひとつになって流れるでしょう。――そして私もその片棒をかついで中原と愛する祖国にドールとゾルードの行進をまねきよせる手伝いをすることになる。……どうして私は生まれてきたんだろう。これまで一度だってそう思ったことはなかった。どんな悲惨な生まれでも、誰にも欲しがられもせず森のおいぼれ導士にかろうじて拾われて生きのびていた幼いころだって。――でももう戻れない。だからもうそれはいいんです。あのかたは私にとって絶対です。あのかたの決めたことはもう私にとって何ひとつ動かすことはできないし……それがあのかたの――」
(それが、よしんば、あのかたが、《みずからの死》を求める決意をされたことであろうとも……)
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

私も同じようなことを――ヴァレ君の台詞の中の「あなた」を「ナリス」に置き換えて思ったものです。
仮にナリスがイシュトの要望を受け容れなかったとしても、いつかはこうなるだろう――仕方がない、なるようにしかならないであろう。でも、何故それがこんなにも早く訪れるのか――と。

 


「――ああ、本当にどうしてきのうの夜、あなたを殺せなかったんだろう――これで、死ぬまでに後悔しつづけることが二つに増えてしまった」
「もう一つってのは何なんだよ」
「ナリスさまを殺せなかったことですよ。二回か三回、殺そうとして――一回は剣に毒を塗って。もう一回は、あのかたののどに手をかけて、しめようとして」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

……そして、きっと今後もナリスを殺せないまま終わるのね(涙)
(まあ、もしかしたらそうなるかもしれませんが、その前にナリスが自害するような気がするので……)

 


「あのかたはね、私がこのパロでただひとり、あのかたに頭っから魅了され、あのかたの法螺だのあのかたのいいかげんな策略だのに大人しくごまかされようとしてない人間だ、というので、目ざわりで仕方がなかったんです。だから私を御自分のいうなりになる人形にしようとしてそれはそれはばかげた陰謀をたぁくさん、めぐらしておいでになりましたよ。私はそれを全部ばかにしていたんですが――そうしてそこからなんとか抜け出そうとして画作してたんですが、結局――自業自得でワナにはまり、どつぼにはまったのは私のほうだった、ってことですかね。それこそまさに自業自得なんですけど」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

まあ、確かに自業自得とも言えなくはないのですが――リギアのことに関しても、ですね。
でも、ヴァレ君という存在は、ナリスにとっては目の上のたんこぶだったのでしょうね。

 


「ただあのかたは私にとって絶対になってしまったんです。理屈でも、善悪でもないんです。ただ絶対なんです」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

至言です。(^^)
私もヴァレ君に対してそう思っております、はい。

 


「ただ、とにかく私はナリスさまが絶対なんです、たとえあのかたがどれほど馬鹿なことをなさろうと、自殺行為だとわかっていようと、あのかたが決められた以上私はそれに従うしかない。あのかたを離れることも捨てることもそむくこともできない以上、どこまでもついてゆくしかない。まったくどれほど世間が驚くことか! いったいいつ、どうしてそんなことになったのかと腰をぬかして魂消るに違いない。想像しただけで、その点だけはちょとばかりざまあみろと思いますよ。まったくね!」
本伝第五十九巻「覇王の道」第一話「帰途」より

例の噂の広まりからして、どのくらい世間が驚くかどうかは判りませんが、取り敢えずルナン候やランズベール候は腰を抜かして魂消るに違いありません。これだけでも、ヴァレ君ではありませんが、ちょっとばかりざまあみろ、と思いますね。ふふふふ。

 


「まあ、この世界ってものはきわめて血も涙もなく順列といいますか、実力が決定してしまうところでしてね。もちろん多少は念の力だの、番狂わせもありますが、基本的にはとにかくただ、力のあるものが偉い、実力のあるものが上、それ以外のなんの基準もない。だからこそ、魔道十二条なんてものがちがちに私たちを縛ってるんです、そうでなけりゃ、力のあるものがないものにたいしてどんな圧政でも、どんな非道な命令でも従えさせられるってことになっちゃいますからね。ましていわんや何も知らない善良な一般市民においておや」
本伝第五十九巻「覇王の道」第三話「魔道師対決」より

本当にそう思う今日この頃です。しみじみ。

 


「ためしに私に対してやってみますか?」
「疑うのなら私に向かって云ってごらんなさい。『俺はヴァレリウスのしもべだ』それとも『俺はヴァレリウスのことばに従おう』――さあ、早く」
本伝第五十九巻「覇王の道」第三話「魔道師対決」より

これって「言うな」と言っているようなものでは……?(笑)

 


「あのかたにふれたものは運命がかわるんですよ。あのかた自身は決してグイン将軍のようなおそるべきエネルギーを持っているわけじゃないが、しかしあのかたはやっぱり独自の運命というか宿命をお持ちのかたなんです。あのかたにふれると運命がかわる。――そう、あなただってあのときクリスタルへきてあのかたと会わなければ――いまこんなところで私と話していやしない。そうでしょう」
本伝第五十九巻「覇王の道」第三話「魔道師対決」より

ナリスは本当にヤーンの寵児なのだな、と思います。
ナリスと出会っただけで――巡り合っただけで、それがナリスに対する好感情であれ、悪感情であれ、その感情自体がその当人のこれからの行く末に影響を与えているのだと思います。
ディーンにしろ、リンダにしろ、イシュトヴァーンにしろ、ヴァレリウスにしろ、そしてアムブラにしても……。

 


(それに――あなたとはあまりお仲のよろしくない、そのう、わがパロの出奔された第四王位継承権者もですね……わが姫の最愛の弟御だったかたのことですが)
本伝第五十九巻「覇王の道」第三話「魔道師対決」より

どうやってマリウスがグラチウスにさらわれたのが判ったのだろうか――って、これは外伝にてナリスの命を受けてキタイに飛んだ魔道師もグインに対して言っていましたし、多分にある程度グラチウスの縄張りと思わしき箇所には注意を払っていたのだとは思います。が、マリウスって第四王位継承者でしたっけ? そうなると、第三位は誰なのでしょうか? アルミナちゃん? それともベック公?(?_?)
ところで、このことをナリスは知っているのでしょうか。知らないんでしょうね、きっと。

 


「キタイに中原の平和をおびやかさせるわけにはゆかないのはむろんのことだが、だからといてグラチウスに頼ったらこれはもう毒蛇から逃れるために毒蜘蛛によるようなもので、かえってひどいわざわいを招くかもしれない。そう、その意味では……あなたのおっしゃった計画にのることは正しいのかもしれないという気がしてきましたね。わたしはあるいは正しいことをしているのかもしれない――血迷ってこの世にいたずらに騒擾とわざわいをひきおこそうとしているのではなく。だって、レムス陛下にとりついているカル=モルの死霊がそれほど強力なのだとしたら……いずれ遅かれ早かれキタイ勢力がさらにパロに進出してきたとき、パロはキタイにとって食われる運命になってしまう。あるいはナリスさまが聖王になることだけがそれをはばめるかもしれない――だったら、私のしてることは唯一正しいことなのかもしれない――そうだ、そうとも考えられなくはない」
「そうだ。私は当分そうだと信じていることにしよう。でなくてはとてものことにやりきれない。あのかたを劇的なさいごの運命にむけてこの手でかりたてているのだと思いながらものごとをすすめてゆくなんて――でも、それがパロをキタイから最終的に守るためなんだと思っていられれば――私にもまだ、生きる希望がわいてくるってものだな。あ、気にしないで下さい。ただのひとりごとです」
本伝第五十九巻「覇王の道」第三話「魔道師対決」より

ヴァレ君のひとりごとって、毎度ながら長いなぁ(笑)

 


「そうですかねえ。なんでみなさん、あたしが変だのおかしいだのかわってるのっておっしゃるんですかね。私ほどまともで、正常で、気が小さくて、一般庶民な人間なんてそういるもんじゃないと思うんですがねえ」
本伝第五十九巻「覇王の道」第三話「魔道師対決」より

こんな妙な魔道師あがりの――ナリスにつけつけと物を言える一般庶民はいないと思う……。

 


「たまに、いますからね。自分の知りたくない真実を知ることをいやがるおばかさんが」
あなたがそうでないと知ってちょっと残念な気もしますが」
本伝第五十九巻「覇王の道」第三話「魔道師対決」より

ははははは。ヴァレ君、それって自分のことかい?(^^;;;

                                     

「この手――ごらんなさい。あなたには、見えないでしょう。――この手は……未来永劫、べっとりと血に濡れ手いるのですよ。――狂おしい愛のために犯した殺人、妄執のために犯した罪、愚かしさのために犯した罪――すべての罪のために決してぬぐい去ることのできぬ血に汚れている」
「私には……アリストートスの気持ちは……わかりますよ。あなたからは、ただの、どれほど非道な残虐な犯罪にしか見えないかもしれないけれど――いまの私には、いたいほどよくわかりますよ。……そしてそれに石を投げる資格は私にはない、とも思う。私もまた、愛するひととのあいだに誰かが立ちはだかったら、いまの私なら容赦なく殺しますから。幼い子供だろうが、善良な市民だろうが、――その妄執をもつもの、それは怪物と人々から呼ばれることになるのかもしれない。……だが、アリストートスを弁護するつもりもかばうつもりもさらさらないが……あなたの野望も、あなたの妄執もまた――人々の血を流しているのには違いないのですよ。――あなたのおこしたいくさに愛する人を殺された遺族たちは、いまあなたが彼を呼ぶようにあなたのことを怪物と呼んでにくみうらんでいるでしょう。――それが、この世なんですよ。私はこのごろ……とみにそう思っています。この血まみれの世に生きてゆくというのは、こういうことなのだ、と……」
本伝第五十九巻「覇王の道」
第四話「覇王の道」より

何かしみじみさせますね。
ヴァレ君のこれからの決意がうかがえるような台詞です。
でも、お願いだから、この手の台詞を言う際にアリと自分を並べるのは止めてね。(^^;;

 


「私も、いつか――必ず、そうして非業の最期をとげる」
「それほど遠くない未来かもしれない。たとえことが無事成っても、私はこれまでの犯した非道な罪のむくいで、あなたのような、愛するものを私の手で殺された怒りにもえる復讐者の手にかかって路上にたおれてゆくでしょう。不思議なことです。そう考えると私は、とても心がやすらかになるんですよ。――いつかそうしてちゃんと罪のむくいをせねばならぬだろう、そう思うと、それが正しい、それでいい、それまでかりそめに見逃してもらっているだけのいのちなのだから、そう思うのですよ。――私がやすらぐのは、その――罪なくして私のために死んでいったすべての霊魂の怒りと復讐によって私がいのちをおとす、そのときはじめてなのかもしれない、そう思って」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

ナリスやイシュトヴァーンにはこの台詞は出ないだろうと思います。常に祖国を愛し、平和を望んでいたからこそ出る言葉だと思います。

 


「むろん、その前に――私には、決してこの世に一人残していってはいけないかたをちゃんと――ドールの黄泉まで送りとどけるという、さいごの任務が――神聖な絶対の任務が課せられてしまっているのではありますがね」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

……送り届けた後は、自分の道を歩くんだよ(涙)

 


「答えろ。――いや、まず、お前の本性からだ。お前は、もぐりの闇魔道師などではないだろう? 所属ギルドを答えよ! 魔道十二条の名において、正式の名乗りをあげろ!」
すべては、そやつのさしがねなのだろう!
「そやつが、中原をわがものとし――パロを内部より侵食し、新生ゴーラを誕生させてそれを思うがままにあやつり――そしてケイロニアをほろぼして中原に君臨しようとたくらんでいるのだな! そうだろう!」
本伝第五十九巻「覇王の道」
第四話「覇王の道」より

魔道師らしいヴァレ君です。(T-T)
こんなにも格好いいのに、何故にナリスの前だとああなんだろう……ほろり。

 


「いっそ、私こそ誰かに知恵を借りたい気分になってきた。私は三大魔道師ともしかしてそれ以上かもしれないなんてそんな凄い空前絶後の大魔道師の怪物なんか両方とも引きうけて中原を守るには、あまりにも小物なんだけどなァ」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

そしてこのことはパロ魔道師ギルドにも伝えることが出来ませんし……本当に困ってしまいますねぇ。(^^;;
でも、いずれは「ファイラスの魔神」となるのだから、そうそう小物ではないと思うのだけれど……どうだろう?

 


「どうやら私もあんまり皆さんがそうおしゃるんで、自分は変なやつらしいと思うようになりましたよ」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

だから最初っからそうなんだってば(笑)

 


「覇王の道はね――」
「友とはゆかれない、ということですよ。――これを覚えておきなさい、ヴァラキアのイシュトヴァーン。私はずっとそう思っていましたよ……これは、あなたのことについてではなくて――もう一人の……あまりにも人として多くを与えられていすぎたがために、あまりにも多くを望んでしまったひとのことについて……」
「ひとは、ひとでいるあいだだけ――ひととして平凡に存在しているあいだだけしかひとではいられないんです。ひとでなくなるのはひとでなしになること。――ひとの心を持たぬ存在になることです。ひとというのはね、ヴァラキアのイシュトヴァーン、友を愛し、家族を愛し、祖国を愛し、将来を夢み、平和を望み――日々の生活のかてを得るために真面目に働いて、多くを望まず、ささやかな満足を楽しみにその日が平穏にすぎてゆくことだけを望むもの……その心をこえたとき、ひとは……ひとであるままでひとでなしになることはできないんです。あなたはこれまで、まだひとの心を――それもゆたかな若く素直なひとの心を持ったままどんどんここまでこられた。――あなたはリーロ少年に悪運を自分が招き寄せたと嘆いておられた。まさにそのとおりです……あなたがその少年を愛したことがその少年を殺すことになった。あなたを愛する奇怪な参謀がしたことではありましたが、じっさいには、あなたがそのごく平凡な利発な少年を愛したことがその少年の運命だったんです。……普通の人間には、ひとでないものを受け止めることは――ひとでないものの運命をともにになうことはできない。私は、イシュトヴァーン――あがきましたよ。もがき、抵抗し、逃げようとし、不信と反発にのたうちまわり、なんとかしてのがれようと必死にあらがい続けましたよ。――私はひとでありたかったから。……ごく平凡に、凡庸に、歴史のなかに名前なんか残さずともいい、友を愛し、恋人を愛し、ささやかな楽しみをともに楽しみ、祖国をうれえ、祭を楽しむ平凡でささやかな名もない庶民として生きて、そして死んでゆきたかったから。――受け入れるのになんと長いことかかったことだろう。おのれの運命を――ひとでなしとして生き、ほろびてゆくのだというおのれの運命を受け入れるのに。いまはもう落ち着いています。何ももう、悔いることはありません――選んでしまいましたからね。もうこのあとどうなろうとも私は後悔しない。これが私の人生であったのだとドールが迎えにきたときに胸をはって宣言してやる。その覚悟はできています。このさきどんな非道なことをしても、どんなむごいことをしても――どんな、人でないようなおそるべき罪をかさねても、私の心はゆるがない。私は選んだのですから。……でも、あなたは――」
あなたはたぶん自分がいったい私と、そして私の剣の主に何を運んできたか、一生理解することはないかもしれませんね。ヴァラキアのイシュトヴァーン……」
「それはかまいません。もう、誰が使者になろうとも、いつかはこなければならなかった使いだったということは私にはもうわかっている。それがあのかたの運命なのだから――でも、イシュトヴァーン。あなたもまた、運命のむくいは受けるのですよ……あなたのゆくてにるいるいと折り重なる死体の山が私には見える……あなたの足元から燎原に燃え広がってゆく業火が私には見える。――覇王の道はその炎によって切り開かれてゆく――それは、ただ一人、背中に幾万、幾十万の鈍いと怨嗟とを背負ってゆかねばならぬ道だ。――そこには友もない。愛もない。むろん夢も、ゆるしあい心をゆだねあう信頼もなければ心からおだやかに幸福を感じるささやかなぬくもりもない。悪夢を見ずにぐっすり眠れるやすらかな一夜さえない。そういうものすべてにあなたは背をむけたのですから。――覇王の道はただ一人でゆかなくてはならない――私のいうことがわかりますか、ヴァラキアのイシュトヴァーン。あなたはその道をふみしめてゆかなくてはならないのですよ。……いまならまだ戻れる――かもしれない。わかりません――もう戻る道はあなたにはどざされているかもしれない。でも……あなたの選ぼうとしている道は、ひとでなくなること、愛も、信頼も、ましてや友もその手にかける血に狂ったドールの配下となること……」
「なぜ、すでにここまでもきていながらあなたの心がそんなにもやわらかなままなのか、私にはわからない……でももうじき、きっとあなたは選ばなくてはならなくなる――そして何回でも選び直さなくてはならなくなる。――そのたびごとに選択は厳しく、そして血にまみれたものとなってゆき、あなたはいよいよ孤独になり、おそれられ、ただ一人世界の廃虚のなかに立ち――私のいうことがわかりますか……」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

省略するには忍びなかったので全文を載せたら、とんでもない長さになりました。あああああ。(^^;;;
でも、王になるのは――覇王になるのはこういうことなのだと思います。イシュトも「わかってらぁ」なのですが、本当にきちんと理解しているのでしょうか。本能的には判っていたとしても、いざ目の前で同じようなことが繰り返し起きたら、感情としてはどう思うのでしょうか。また前と同じように人のせいにしたり自分を責めたりするのでしょうか。
(ちなみにイラストでも右側に貼り付けようかと思ったのですが、余計スペースを取るだけなので断念しました。)

 


「なら、よろしいですよ……もう、何ひとつ、いうことはありません。――御自分の信じた道を存分にゆくのですね。道をきわめることですね――覇王の道を。私たちは――あいにくと、たぶん私たちはその道のきわみを見届けることはできそうもありませんけれどね……私たちは、仲良く二人で……ドールの黄泉に逃げ去っているでしょうからね……どちらにしても……申し訳ないですね。私たちはもう決して孤独にはならない。私たちは、永遠に――《私たち》になってしまったのですからね……」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

カメロン曰く不健康な考え。うううううっ。(/_;)
実はこの台詞を聞いた時、もしかしたらこれはヴァレリウスだけがそう思っていて、ナリスはそうは思ってはいないのではないか――と危惧していたのですが、どうやら(一応は)違うようですし、少しほっとしています。
でも、また逆に、巻を重ねるにつけ、この台詞が益々真実味をおびてきているだけに、《私たち》が何処へ向かうのか――何処へ歩き続けるのか――判りきっているだけに、その結果が恐いです。


 


あなたが、そうなすったのです」
「何回でも、そうせずにすむ方法はありました。そのたびに、あなたが、ヤーンのかわりをつとめられ……ドールの時代をこの世に招来させるためにその役割をはたされた。でももう……何も申しません。」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

……ですねぇ。
少なくてもイシュトがモンゴール奪回する際に協力をしたこと――リンダとの間柄を告げたこと――色々とあり過ぎるほどあり過ぎますよね。

 


「私は、凡人なんですから。なかなか――いや、どうしても信じてはいただけないが、私は本当につまらぬ、平凡な心を持った心弱い俗人にしかすぎないんですから」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

うんうんうん(涙)

 


あなたは――あなただけは何をお考えになっても、何をたくらまれてもちっとも不思議のないような気がするからおかしなものだな」
「でも、そうですね――たぶん、私は、馴れなくてはいけないのでしょうね……私は選び……そして、剣を捧げたというのに――でもまだ私は悪魔になりきれない。あなたからみたらどんなにおかしく、鼻で嘲笑う対象でしかないのでしょうね。あなたのほのめかす極悪非道な陰謀にいちいちおろおろして大騒ぎし、非人道的だ、残酷だ、してはならぬ、人倫にもとる、などと泣き騒ぐ私は。……だからこそあなたは私をこうしてずっとからかい、もてあそんで無聊を慰めてこられたのにちがいない」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

この後でしっかりとナリスが肯定しています(涙)
でも、お願いだから、馴れないでね、ヴァレ君。

 


「サリアの前で結ばれた――そう、大公妃さまはいっておいでになった」
「私とあなたの名はドールの名において結ばれ――パロの人びとの記憶に残るのでしょうね。……病めるときも、すこやかなるときも――反逆者として血の海にたつときも、たくみかなわず毒をあおるそのときも――永遠に、おそばに……」
本伝第五十九巻「覇王の道」第四話「覇王の道」より

そして「ゾルーガの指輪」へと続くのであった(涙)

 

  ―6―  

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